Breakpoint Studio LLC.
Breakpoint Studioが開発・運営するスキー・スノーボード滑走記録アプリ「Slopes」は、2013年の4月にサービスを開始し、2023年には運営10年目を迎える。GPSを使用した最高速度・滑走時間・総距離・下降距離の記録や、友人間でのリアルタイム位置情報共有、3Dでの滑走再生など、スキーヤー&スノーボーダーにとって嬉しい機能が充実したアプリだ。日本のスキー場(約400箇所)を含む世界3500以上のスキー場に対応しており、ゲレンデの降雪予報から雪質へのフィードバックまで確認できる。
2022年には累計ダウンロード数200万を超え、ARR(年間経常収益)100万ドルを達成するなど、世界中で愛されるウィンタースポーツトラッキングアプリの一つである。
今回のストーリーでは、主にSlopesがここまでの成長を遂げるまでの10年間の道のりを振り返りながら、Breakpoint Studio代表であり、Slopesの個人開発者であるCurtis Herbert(カーティス・ハーバート)に新機能や開発思想ついて話を聞いた。
PROFILE
Breakpoint Studio代表 Curtis Herbert
米国フィラデルフィア出身。幼少期から年に2-3回スキーを楽しんでいたが、10年ほど前にスノーボードに転向したことからウィンタースポーツに本格的にのめり込むようになった。2021年にコロラド州に拠点を移す。
中学時代、数学の先生にTI-82グラフ表示電卓譲り受け、独学でTI-BASICを勉強したことがプログラミングを始めるきっかけとなった。高校と大学ではウェブ開発に携わり、大学卒業後はロッキード・マーティンに就職し6年間勤務。その間にiPhoneが発表され、即座にiPhoneアプリの開発に取り組む。2011年に退社し、フリーランスとして自分のコンサルティング会社を立ち上げ、ウェブ開発から徐々にモバイル開発に移行し、2013年にSlopesをリリース。
Slopesの開発秘話
—– Slopes開発のきっかけは何だったのでしょう?
Curtis:ある晩、スキー旅行の帰りに友人とデニーズで夜食を食べながら、その日の滑走の話になったんです。誰が一番早く滑ったのか、誰が一番長く滑ったのか、グループで合計どのくらい滑ったのか。
当時、スノーボードの滑走を記録するために別のアプリを使っていましたが、そのアプリは動作するものの、UXがかなり粗かったのです。統計データはそこにありましたが、グラフや地図に埋もれていました。比較するのに十分なデータを見つけるために、私は3つの画面を行き来する必要がありました。そのとき、Slopesを作りたいと思ったのですが、実際に作業を始めるには、大きな後押しが必要でした。
Slopesのアイデアに惹かれながらも、どうすれば採算が取れるか分からず、何カ月も放置していました。そして、2013年の4月にようやくSlopesの開発を始めたんです。実は、もう少し前からアイデアはあったのですが、おそらく半年ほど、本当に価値のあるものを作れるかどうかを疑って、自分自身にストップをかけていたのだと思います。
「もっといいものができるはずだ、自分でアプリを作ろう!」と声に出して言うのは、とても危険なことなのです。デニーズでの発言が、アプリビジネスの経営につながるとは、当時は思いもよりませんでしたね。
—– 開発を始めてから困難なことはありましたか?
Curtis:ある晩、スキー旅行の帰りに友人とデニーズで夜食を食べながら、その日の滑走の話になったんです。誰が一番早く滑ったのか、誰が一番長く滑ったのか、グループで合計どのくらい滑ったのか。
当時、スノーボードの滑走を記録するために別のアプリを使っていましたが、そのアプリは動作するものの、UXがかなり粗かったのです。統計データはそこにありましたが、グラフや地図に埋もれていました。比較するのに十分なデータを見つけるために、私は3つの画面を行き来する必要がありました。そのとき、Slopesを作りたいと思ったのですが、実際に作業を始めるには、大きな後押しが必要でした。
Slopesのアイデアに惹かれながらも、どうすれば採算が取れるか分からず、何カ月も放置していました。そして、2013年の4月にようやくSlopesの開発を始めたんです。実は、もう少し前からアイデアはあったのですが、おそらく半年ほど、本当に価値のあるものを作れるかどうかを疑って、自分自身にストップをかけていたのだと思います。
「もっといいものができるはずだ、自分でアプリを作ろう!」と声に出して言うのは、とても危険なことなのです。デニーズでの発言が、アプリビジネスの経営につながるとは、当時は思いもよりませんでしたね。
※Slopesのベータテスターはマウンテンバイカー
私の友人にはマウンテンバイカーが多かったので、アプリのテストをお願いしました。夏になるとスキー場がマウンテンバイクのコースとして開放されるので、友人たちに「ライディング中は、携帯電話をポケットに入れておいてくれないか」と頼んだんです。臨時のベータテストチームは、自転車をリフトで運び、かつてのスキー場のゲレンデを走ってくれました。最初にやったことのひとつは、集めたデータを自分のコンピューターで再生するためのハーネスを作ることでした。そして、データをどのように分割するか、どう見せるかを考えました。
2015年までは副業としてSlopesを運営していましたが、サブスクリプションモデルに切り替えたところ、ダウンロード数が増えていることに気づきました。新しい牽引力に刺激され、Slopesをフルタイムの仕事にしようと決意し、デザインに再び没頭するようになりました。アプリを徹底的に作り直したんです。自分の机の上だけでなく、現実の世界でも使いやすいようにしなければならないですから。
Slopes 2つの開発軸
—– Slopesを開発・運営する上で大事にしていることはありますか?
Curtis:単純に、自分自身が使いたいと思う製品を作りたかったというだけです。私は子供の頃からAppleのソフトウェアやUXへの取り組み方の大ファンだったので、ウィンタースポーツのアプリにも同じような洗練された高いハードルをもたらしたいと思っていました。それが、Slopesの生涯を貫く大事な道しるべとなっています。
Curtis:2015年、私の中で根付いたもう一つの決意は、VC/シリコンバレーのトレンドに参加するアプリの一つにならないことでした。
例えば、
① 派手に市場に出てきて、多くのユーザーを獲得するためにあらゆる仕掛けを施し、「注目のアプリ」になることを目指し、将来的に会社の売却や上場したりして、多額の利益を得る。
② ~3年で十分に大きくなれず、「投資に見合わない」状態になり、大きなイグジットが期待できなくなる。
③ その後見捨てられ、更新されずにストアで何年も放置される
というようなものです。
「1,000万ドルでスキー場に売却する」という派手な撤退計画も、「ユーザーの滑走データを売って、アプリを無料にする」という不気味なことを考えたこともありません。
ただ、Slopesをビジネスとして成長させ、フルタイムの仕事としてアプリに全力を注ぎ、最終的には私のクレイジーな野心的アイデアを実現するために小さなチームを雇うことができるような、シンプルで公正な価格に設定することです。
Slopesの成長
—– Slopesは10年目を迎えますが、順調に成長してきたのでしょうか。それとも成長ペースが加速するような転機があったのでしょうか?
Curtis:やはり最大の変曲点は、趣味のアプリからビジネスにしようと決めた2015年だと思います。最初の2シーズンは夜間や週末にしかSlopesに取り組めなかったのですが、数千人のユーザーがこのアプリを本当に気に入ってくれて、ここにビジネスがあるかもしれないと思ったのです。しかし、最初の2年間は買い切り型(3.99ドル)だったので、それが足かせになっていました。
その年の夏、このアプリを長期的なビジネスにすることに真剣に取り組みました。アプリのサブスクリプションはまだ一般的ではありませんでしたが、スキー場の「シーズンパス」のように年間払い型を取り入れ、基本機能を無料で提供しました。すると1シーズン後には、アプリにフルタイムで集中できるようになったのです。
その後、毎年2倍程度のペースで着実に成長することができました。しかし、Slopesがこのペースで成長し続けられるようになるまでにはたくさんの小さなステップがありました。大きな転機があったというよりも、継続的な改善という健全なロングゲームのようなものですね。その過程で多くの実験や微調整、学習が行われましたが、それは素晴らしい製品を作ることに専念しているからこそ、できたのだと思います。
ビジネスの最大の脅威
—– 長年にわたり、膨大な量のデータを処理されていると思いますが、スキーヤーの行動で特に目立ったもの、驚いたものはありますか?
Curtis:ユーザーにとって驚くべきことのひとつには、実際に滑走している時間よりも、リフトの行列に並ぶ時間やリフトに乗っている時間の方がはるかに多いということではないでしょうか。しかし、私にとっては、滑走ごとのミクロなレベルではなく、もっとマクロなレベルでのスキーヤーの行動でした。具体的には、天候と、それがスキーヤー・スノーボーダーに与える影響です。この仕事を始めた頃は、気候変動が私のビジネスにとって最大の脅威となるとは思っていませんでしたね。
Epic/Vailが数年前に、シーズン初めから半ばにかけてのスキー場来場者数の大幅な減少(8%)を発表したのを覚えています。その年、カナダのウィスラーではシーズン初めの降雪量が過去30年間で最悪だったと報告されていました。
今年も、ヨーロッパの多くの地域では季節外れの温暖な気候が続いており、いくつかの国では元旦に1月としては過去最も暖かい日を記録しました。この暖かさに豪雨が加わり、12月に降った雪が洗い流されたため、アルプス各地のスキー場、特に低地のスキー場は、一時的にゲレンデを閉鎖しています。また、ヨーロッパでは天然雪に頼った雪造りしか行っていないスキー場が多く、オープンできない可能性もあるようで本当に恐ろしいです。
Slopesは、このような深刻化する気候変動によって危機状態にある冬と雪を守るために立ち上げられた団体「Protect Our Winters(POW)」に、毎年の収益の2%を寄付しています。
Slopesの新機能
—– 新機能でインタラクティブなゲレンデマップが追加されましたが、開発に至った想いなどはありますか?
Curtis:スキー場では、ゲレンデマップをデジタル媒体で提供し始めていますが、これは現時点では急ごしらえで不完全なソリューションでした。2000年代にGoogleマップやGPSが車の運転方法を劇的に変え、道に迷う恐怖を最小限に抑えたように、スキーにもインタラクティブなマップ機能があれば、初めて行ったスキー場で誤って上級者コースに迷い込んでしまうことを心配していた多くの人たちのハードルを劇的に下げることができるはずだと考えたのです。
あくまでも、スキー体験をテクノロジーに支配されることはあってはなりません。これは陥りやすい罠で、テクノロジーで何ができるかに興奮してしまい、本当に必要な機能なのかを見失ってしまうことがあります。テクノロジーは、私たちの生活に入り込み、私たちの「関与」を求めるものであってはならないと思うのです。Slopesは雪山でのスキー体験を邪魔せず、必要なときだけ手助けができるような存在になれるよう努めていきたいと考えました。
Curtis:今回追加されたデジタルマップでは、もう雪山で迷うことがなくなるよう、より簡単で直感的にゲレンデマップにアクセスできるようにしました。特別版デジタルマップでは、コース名からリフト情報、難易度、自分や友達の位置情報までをSlopes独自のウィンターマップに重ね合わせることで、インタラクティブにスキーやスノーボードの滑走記録を行うことができます。
Slopesのチームはこれからのシーズン、世界中のより多くのスキー場で特別版デジタルマップの提供を進めるために、社内の専門家がデータポイントを分析し、正確な使用体験を一から構築することに全力を注いでいます。ユーザーの皆様のお気に入りのスキー場で1日も早く特別仕様のデジタルマップを提供できるよう、努力しています。現在、日本では野沢温泉、ニセコユナイテッド、Hakuba Valleyでの使用が可能となっていますが、今後対応スキー場をどんどん増やしていく予定です。
今後の展開
—– スキー場とアプリがどのように交わり、今後どのように発展していくことを望みますか?
Curtis:スキー場がSlopesと提携し、Slopesのシーズンパスをスキー場のリフト券の一部として提供する、というコラボレーションをしてみたいですがちょっと偏った夢かもしれませんね。2022年のインディ・パスには、2日間のSlopes Premiumが付いてくるというようなことを実施しましたが、スキー場自体がSlopesをリブランディングして自分たちのアプリに取り入れること以外に興味を持ったことは一度もなかったんです。彼らは最高の雪山体験を提供することに集中し、私は最高のデジタル体験を提供することに集中することが一番なのかと考えています。
—– 今後、Slopesはどのように成長していくでしょうか?
Curtis:より多くのスキーヤー・スノーボーダーにとって、コミュニティーの一部であると感じられる存在になっていきたいです。私は、Slopesを思い出を綴る日記と考え、できるだけ人間らしくなるようにデザインしました。その人間的な要素が、Slopesを単なる統計トラッキングの域を超えたものにしていると思います。
このアプリは、初めて滑る初心者から、急斜面を滑る人間ロケットまで、あらゆるレベルのスキーヤーに、豊富なパフォーマンス指標を通じて自分自身を定量的に評価する方法を提供しています。簡単に言えば、「どれだけ上達したのか」がわかるのです。もちろん、何度か転倒することもあるでしょう。でも、初めての中級者向けコース、そして上級者向けコースに到達したときの喜びをSlopesに綴ってほしい。
Slopesは、今後もスキーやスノーボードの体験を最大化し、ウィンタースポーツの魅力をより追求することを目指していきます。Slopesが日本のユーザーの皆様が家族や友人とスキーへ出かける際のお役に立てば幸いです。
そのために、これからも努力を続けていきます。
関連プレスリリース
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Breakpoint Studioについて
米国コロラド州に拠点を置く「Slopes」アプリの開発・運営会社。代表のCurtis Herbertは、Slopesの個人開発者でありウィンタースポーツをこよなく愛すスノーボーダー。2010年よりSlopesの開発・運営を行なっている。
Slopes公式ページ:https://getslopes.com/
Twitter:https://twitter.com/slopesapp?s=21
出典:PR TIMES STORY https://prtimes.jp/story/detail/rYQDRRUv4lr