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アウトドア業界に革新的な製品を。アークテリクスとGORE-TEX・ゴア社、互いを高め合い続ける関係性

アークテリクス

1989年、ハーネスを製造販売するロック・ソリッド社としてカナダ・ブリティッシュコロンビア州、ノースバンクーバーで設立されたアウトドアブランド、ARC‘TERYX (アークテリクス / ※1991年に現在の社名へ変更)。創業者でありクライマーのデイブ・レーン (Dave Lane)とジェレミー・ガード (Jeremy Guard)が自ら欲するアイテムは既存製品にはない独創的な発想が特徴で、業界でたびたび話題に上ってきた。
そんなアークテリクスが1996年からタッグを組んでいるのが、高い防水・透湿・耐久性性を誇るGORE-TEX (以下、ゴアテックス)で知られるゴア社だ。ライセンスの発行に慎重な姿勢を見せるゴア社がアークテリクスにライセンスを与え、コラボ―レーションを続けている理由は何か。両社の関係性があるからこそ実現し得る未来について伝えます。

クライマーとして使いたいレインジャケットの開発を

アークテリクスがゴア社を訪問したのは、ライセンスを得る1年前、1995年のこと。クライマー視点に立ち、自身が本当に使いたい一心で作り上げたハーネス、バックパックが業界内で評判を呼んだ後のことだ。
次の開発対象として候補に上ったものは、年間降水量が多いバンクーバー暮らしの彼らにとって必需品のレインジャケット。従来のレインジャケットは彼らにとって重く、可動性にも不満があるものだった。加えて、透湿性の低さにも課題を感じていた。

当時のアークテリクスにはアパレル製造のノウハウはなかった。しかし、開発メンバーは自分たちが使いたい一心で、さまざまな素材をテストする。その中に、当時は街中の店で反物として入手できたゴアテックスがあった。
ゴアテックスは、表地と裏地の間に、防水性・防風性・透湿性を持つメンブレンを挟み、ラミネーションで貼り付けたもの。ラミネーション仕上げを行う素材メーカーの中で、ゴア社はパイオニアだった。対するアークテリクスにはアパレル製造ノウハウも経験もなく、有するのはこれまでにない革新的なレインジャケットのアイディアだけ。しかし、数ある素材を試す中でゴアテックスメンブレンの耐久性に強く惹かれたアークテリクスは、そのアイディアを持ってゴア社の門戸を叩いた。

従来の汎用的な製品から脱却し、革新的なレインジャケットを実現

ゴア社は歴史ある会社だが、革新的な挑戦に興味を抱くベンチャー気質のある社風が特徴でもある。先述したように、当時のアークテリクスにはアパレルの製造経験はなかったが、画期的なハーネス、バックパックを世に送り出していた実績、持参したレインジャケットのアイディアの革新性を評価し、ゴア社はライセンスを与える決断を下した。
アークテリクスが新しいレインジャケットで実現したかったものは、透湿性が高く着用時に中が蒸れないもの。軽くてクライミング時に身動きを取りやすいもの。その上で、山中で長く愛用できる耐久性があるものだった。
ゴア社はライセンスを付与したメーカーの製品を自社でも必ずテストする珍しい企業であり、ライセンス製品の品質に強いこだわりを持っている。高品質を保持するため、ウェアメーカーに製造方法を指定している点もゴア社の特徴だ。しかし、従来の作り方ではアークテリクスが求めるレインジャケットは実現しない。そこで、アークテリクスは3Dカッティングを採用し、可動性を向上することをゴア社に提案。デザイン面においては、付けることが常識とされるポケットを「クライミング時には使わない」と大幅に取り去り、胸ポケットだけとする判断を下した。

また、当時こちらも常識だったフラップを取り去るため、止水ファスナーを考案し、YKK社にアイディアを持ち込み製品化を実現。軽量化、透湿性実現のため、ジャケットに使われていたシームテープを25mm幅から17mmと場所に応じて細くする許可もゴア社に求めた。そのようなこだわりを詰め込み、当時のアウトドアジャケットから300グラムの軽量化を実現させて1998年に初代のAlpha SV Jacketが発売された。
これらのアイディアは、当時のアウトドアウェアメーカーにとって業界の常識を覆すものだった。常識に縛られないアイディアを貫き通せたのは、作り手側よりも使い手側としての視点を重視していたためだ。自らの信じる使いやすさを妥協せず追求し、クライミングに不要なものは極限まで削ぎ落す。このスタンスは現在のアークテリクスのデザインにも通ずるものだ。

互いのこだわりと挑戦心が深い信頼関係に

業界内で驚きを持って迎えられた初代Alpha SV Jacketの発売後も、両社の関係性は継続。最初の創造的な取り組みを評価され、この後も共同開発を続けるに至った。トム・フェレルを始め、アークテリクスには新素材やモノ作りに対するアイディアを多く有するメンバーがいることも強みだ。クライマーであり化学知識に長けた学者肌でもあるトムは、化学レベルで素材について話し合える稀有な人材として、ゴア社に有益なアイディアを多くもたらした。

コロナ以前は年に3回ほど対面でオフサイトミーティングを続けてきた両社。現在もオンライン、オフラインでのブレストを続け、短期的、長期的な開発計画について互いのビジョンを共有し合っている。ゴア社と密に連携を取り共同開発を続けられるのは、アークテリクスがゴア社の防水透湿素材のみを使い続けているがゆえだろう。ゴア社は、すべてのラミネーション加工を自社工場にて手掛けており、素材のバラつきが極めて小さい。互いのモノ作りへのこだわり、創造性が信頼関係を育んできたのだ。
今、両社が将来の製品化を目指し取り組むのはカーボンフリーの撥水素材だ。すでにカーボンフリーの撥水素材は使用されているが、まだ最も過酷な環境での使用に耐えうるものは実現していない。豊かな自然があってこそのアウトドアブランドとして、カーボンフリーかつ高い耐久・防水・透湿性を誇る素材を実現することがアークテリクスの望みであり、両社が見据える目標だ。
アークテリクスの「自分たちが使いたいものを作りたい」という熱い思いのもとに声をかけて始まった、ゴア社との30年弱における関係性。開始以来、防水透湿素材は今でもゴア社の素材のみを使用し、商品開発をしている。新しいものを作り出すため、R&Dに対しても徹底的に力を入れている両社は、今後ともクライマーを満足させる商品を作り続けていく予定だ。

出典:PR TIMES STORY
https://prtimes.jp/story/detail/bj4eqRsk21x
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Sudo

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Producer

須藤大輔 /「&FLOW」プロデューサーでありアジテーター。広告代理店や制作会社でAEとしてキャリアを積んで約四半世紀。主にファッションやスポーツ関連のクライアントを担当。アウトドアシーンにも造詣が深い。週末はラグビー三昧。ラン、ヨガ、トレーニングも。好きな言葉は「失ったものを数えるな、残されたものを最大限活かせ」。チャームポイントは涙腺が弱いところ。

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